「自己肯定感」を高める小さな習慣~日常の風景からの気づき~

先日、書斎の窓から見えた光景。小さな子どもが自転車の練習をしていました。何度も転びながらも、少しずつ前に進む姿。最後に数メートル漕げた時の、あの誇らしげな表情が忘れられません。子どもは本来、自分の小さな成長を素直に喜べる存在なのです。

しかし、カウンセリングルームでは多くの大人が「自分を認められない」と悩んでいます。あるクライアントさんはこう言いました。「いつも自分が情けなくて…もっとできるはずなのに」。

自己肯定感とは、完璧な自分を愛することではなく、不完全な自分もそのまま受け入れることなのかもしれません。

目次

低い自己肯定感が及ぼす影響

雨の日の書店で見かけた若い男性。自己啓発本のコーナーで立ち読みをしながら、何度もため息をついていました。おそらく「もっと自分を変えなければ」という思いに苛まれているのでしょう。

心理学の研究によれば、低い自己肯定感は様々な心理的問題の根底にあることがわかっています。完璧主義、過度の自己批判、他者との比較、承認欲求の強さ…これらは全て自己肯定感の低さから生じる可能性があります。

先週、カフェで偶然耳にした会話。「SNSを見ると、みんな充実してるように見えて落ち込む」と若い女性が友人に打ち明けていました。現代社会では、他者との比較がより容易になり、自己肯定感を保つことが難しくなっている面もあります。

自己肯定感が育まれる土壌

カウンセリングの現場で、クライアントさんの生育歴をお聞きすることがあります。そこから見えてくるのは、自己肯定感は幼少期の「無条件の愛」によって大きく育まれるということです。

公園で見かけた親子の光景。子どもが描いた絵を見て、親が「すごいね!」と声をかけていました。その瞬間の子どもの輝く表情に、自己肯定感の種が育まれていく様子を見た気がしました。

一方で、「もっと頑張りなさい」「なぜもっと良い点が取れないの」といった、条件付きの評価が繰り返されると、「自分は結果を出してこそ価値がある」という条件付き自己肯定感が形成されてしまいます。

カウンセラーが実践する自己肯定感を高める5つの習慣

ここで、自己肯定感を高めるために私自身も実践している習慣をご紹介します。

1. 「自己対話」の言葉を変える

先日、大切な企画が上手くいかなかった時のこと。頭の中で「やっぱり自分はダメだ」という声が聞こえてきました。そんな時、意識的に「今回は上手くいかなかったけど、次に活かせることがあるはず」と言い換えるようにしています。

自分に対する内なる声、つまり「自己対話」の言葉を少しずつ優しいものに変えていくことは、自己肯定感を高める基本となります。

友人が教えてくれた実践法があります。「もし大切な友人が同じ失敗をしたら、あなたは何と声をかけますか?」というものです。他者には掛けられる優しい言葉を、自分自身にも向けられるようになると良いでしょう。

2. 「小さな成功体験」を意図的に作る

散歩中に見つけた小さな雑貨店。「どうせ買わないだろう」と思いながらも入店してみました。すると思いがけず素敵な一品に出会い、その日一日が明るくなりました。小さな一歩を踏み出すことで、予想外の喜びに出会えることがあります。

自己肯定感が低いと、「どうせ自分には無理」と大きなチャレンジを避けがちになります。しかし、成功体験の大きさは重要ではなく、積み重ねが大切です。

実践できそうなこととして:

  • 一日一つ、新しいことに挑戦する
  • できるだけ具体的で小さな目標を設定する
  • 達成したら自分を具体的に褒める

先日、長年恐れていた電話での問い合わせを実際にしてみたところ、案外スムーズに進み、「意外とできるじゃないか」という小さな自信につながりました。

3. 「感謝日記」をつける

寝る前のちょっとした習慣として、その日あった「ありがとう」と思えることを3つノートに書いています。感謝の視点で一日を振り返ると、見える世界が変わってきます

以前は「今日も大したことができなかった」と一日を終えることが多かったのですが、感謝日記を始めてからは「今日もいろんな良いことがあったな」という締めくくり方ができるようになりました。

例えば昨日の感謝日記には:

  • バスの運転手さんが丁寧に道を教えてくれたこと
  • 久しぶりに美味しいパン屋さんを見つけたこと
  • 夕暮れ時の空の色が美しかったこと

日常の小さな幸せに気づく力は、自己肯定感を支える基盤になります。

4. 「比較」の対象を変える

街中で偶然会った同級生との会話。彼のキャリアや家庭の話を聞いて、自分との差を感じてしまいました。帰り道、考えました。「他者と比較するのではなく、昨日の自分と今日の自分を比較しよう」と。

競争相手は他者ではなく「昨日の自分」。これは心理カウンセリングでもよく伝えることです。

朝の散歩中、以前は5分で息切れしていた坂道を、今は余裕で登れるようになっていることに気づきました。こうした小さな成長に目を向けることで、自己肯定感は少しずつ高まっていきます。

5. 「身体」からアプローチする

雨の日、何となく気分が落ち込んでいた時のこと。いつもより少し背筋を伸ばし、口角を上げて歩いてみました。すると不思議と、心も少し軽くなったのです。

身体と心は密接につながっています。自信に満ちた姿勢をとることで、心も少しずつ変化してきます

実践できるアプローチとして:

  • 深い呼吸を意識する
  • 姿勢を正し、顎を少し上げて歩く
  • 鏡を見て自分に微笑みかける

先日、緊張する場面の前に、トイレで大きく両手を広げる「パワーポーズ」をとってみました。すると不思議と、自信が湧いてきたのです。

自己肯定感が変える日常の風景

街中でのこと。以前なら「自分なんて声をかけても迷惑かも」と思っていたところを、勇気を出して道を尋ねてみました。すると相手は笑顔で丁寧に教えてくれたのです。自己肯定感が少し高まると、人との関わり方も変わってきます

カフェで隣に座った高齢の方との何気ない会話。以前なら「どうせ話しても面白くないだろう」と思っていたところを、自然に言葉を交わしてみると、人生の知恵に富んだ素晴らしい話を聞くことができました。

自己肯定感が高まると、他者の良さにも気づける視点が広がります。それは人間関係の質を高め、より豊かな人生につながっていくのです。

「完璧」ではなく「十分」を目指す

雨上がりの窓から見える虹。七色が完璧に揃っていなくても、それを「きれいな虹」と感じる心。自己肯定感とは、完璧を求めることではなく、「これで十分」と感じられることなのかもしれません。

先日、手作りのお菓子が少し形が崩れてしまった時、以前なら「失敗した」と落ち込んでいたところを、「見た目は完璧じゃないけど、味は美味しい、これはこれでいいんだ」と思えました。その小さな変化に、自分の成長を感じました。

完璧主義の罠から抜け出し、「それでも自分は価値がある」と思えるようになること。それが自己肯定感を高める旅の第一歩なのかもしれません。

自己肯定感は一日で大きく変わるものではありません。しかし、小さな習慣の積み重ねが、確実に自分との関係性を変えていきます。今日から、自分自身に少しだけ優しく接してみませんか?

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